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就労インタビューVol.2 DMM.com〜当事者とともに仕事を楽しむ〜

PJPPの新たな試み、第2回目は第1回目のインタビューにご協力下さった鶴田芳樹さん(仮名)からのご紹介でDMM.com BC部(ビジネスクリエーション部) 部長 梶 進一さんへインタビューを行いました。

障害者雇用のあるべき姿や、管理者としての苦労や喜びも話して下さいました。
事例の紹介とともにご一読ください。

DMM.comタイトル

 


 

ビジネスクリエーション部設立経緯

2014年 障害者雇用率0.9%→労働局から指導(ペナルティ:厚労省HPに企業名掲載)
障害者雇用についてのプロジェクトが立ち上がり、障害者雇用を推進するための受け入れを検討したが下記の問題点が挙げられた。

●通勤困難(事業所のある石川県において、通勤による体力消耗、投薬による副作用で運転ができない、送迎することによるコスト増)
●多目的トイレなどハード面の整備
●対人コミュニケーションの不安、周囲が気になり作業ができない、などといった当事者本人の不安・課題 など

2015年  BC(ビジネスクリエーション)部立ち上げ
在宅勤務(リモートワーク)を採用することにより、上記の問題を解消することができると考える。

●通勤困難の解消
●対人関係によるストレスを低減
●周囲の雑音を気にせず業務に集中できる
●時間の有効活動 など

2020年 障害者雇用率2.5%達成

 


梶さんは、厚労省の手引き「合理的配慮指針」を参考にビジネスクリエーション部(以下BC部)の管理体制を組み立て、実際に業務を行う業務グループと、PF運営部金沢リモートチームの従業員の管理を行いました。
2015年当時、梶さんは前職でのホテルマンの経験を活用して、合理的配慮を自分の解釈で行っていたのですが、それでは管理者の負担が増えることを実感しました。

管理者の負担となる求められていた配慮の例として

・文章が理解できないから口頭で説明して欲しい
・年末調整ができないので代わりに行って欲しい
・人前では話すことができないので、その負担は無くして欲しい
・上司を変えて欲しい

といった内容もありました。

そこで梶さんは、上記の配慮を管理者が負担に感じることなく、障がい当事者へ就業においての目標を設定し、当事者が成長できる工夫を下記の例の通り行うこととしました。

・メール周知文をわかりやすくし、適宜質問するように指導
・年末調整を、行政の支援員やツールを導入し、各々でできるように工夫する
・人前で話せるように徐々に業務の中で慣らしていく
・上司を変えるのでなく業務を変える

これらの工夫を行うことで、障がいを持つ従業員も管理者もより働きやすくなり、現在の雇用率を達成し、多くの功績を得ることとなりました。(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構主催「平成30年度障害者雇用職場改善好事例」優秀賞・The Valuable 500 日本企業加盟)


上記の説明を受け、PJPPメンバーで質疑応答を行いました。

Q.目標を設けた成果例を教えてください。

A.スタッフの一人は自信がつくようになり、人前でも話せるようになりました。
上司を変えるのでなく、担当する業務を変えることにした結果、当事者自身も就業を継続できるようになりました。
反対に、継続できなかった事例としては、担当する業務を変更した結果、仕事のレベルが上がり仕事を覚えられずミスを繰り返すこととなり、管理者の確認や当事者の負担が増え離職となった事案もあります。

 

Q.リモートワークに変更するにあたり、当事者のPCスキルは?

A.PCスキルの向上にあたり、タイピングの練習から始めてもらいました。本人の努力により現在も就業しています。本人も管理者もできない、と決めつけないことが重要だと思います。

 

Q.リモートワークでの発言機会については?

A.年1回の内閣府主催の発表会に出場してもらいました。3人の前から発表の練習をはじめ、懇親会の幹事まで自主的に手を挙げ行うようになっています。管理者である梶さん自身も嬉しい思い出となっています。人前に出れない人だからという先入観で、できない、と決めつけることはやめようと思った瞬間です。
他にも、営業さんから依頼されたテレアポ業務で、管理の立場から精神障がいの症状の悪化を懸念していましたが、当事者本人からのやってみたい、の言葉でテレアポ業務を行うようになっています。最初から、配慮という考え方の下、挑戦する機会を失わせることはやめようと決めた瞬間でした。

 

Q.梶さんの周りに障がい者はいましたか?

A.前職のホテルマン時代のビジネスパートナーが障がい者でした。障がい者に対する(仕事ができないのではないか?という)先入観はなかったです。

 

Q,精神障がい者の就業者比率が70%以上ですが、それだけの比率を占めている理由は?(組織概要図を参照 就業者内訳:身体障がい10名、精神障がい27名)

A.自然にそうなった、という結論ですが、国全体の障がい者の比率の多くが精神障がい者だからではないでしょうか?身体・知的・精神障がい者皆同じように雇用していきたいですね。

組織概要

 

Q.採用基準は?

A.PCスキルチェック、書類選考、面接(zoom)で採用選考を行います。
障がいの度合いや通院頻度など面接を通じてヒアリングし、性格も重視して選考します。
採用後の新人研修もリモートで行うことにより全国採用となっています。

 

Q.一般雇用として就職し、その後障がい者となった場合は?

A.本人とのヒアリングを通じ、配慮の必要性など確認します。配慮することが業務の制限になることもあり得るからです。手帳の有無等関係なく、難病患者になった場合など周囲の理解を必要とする場合はオープンにすることも大切だと思います。また、業務では音声通話のみでビデオ会議はほとんど行いません。
PDだということも気付かれにくいのではないでしょうか?基本的はパフォーマンス、成果物で判断する企業のため、アウトプットさえ問題なければ気にしない、という企業風土です。

 

Q.業務内容は?

A.メール、電話応対、故障端末検証、検証業務、データエントリー、サイト巡回、会員の入退会管理、人事総務業務として、社員アカウント発行、労務管理データベース作成、支払申請チェック、事務用品等消耗品購入、DTP作成、サムネイル制作、html更新、バナー制作など多岐にわたります。
支払い申請のチェックについては、人事課よりもミスがなくなり、業務に対して慎重に行う障害の特性を生かした業務を行うことができており、社内表彰もいただいています。
熱中すると止まらなくなる特性がある方も多いので、1時間半に1度は休憩するよう周知しています。

 

Q.チームの体制は?

A.いわゆる特例子会社に近い形でBC部という部署が独立して、障がい者雇用を行っています。

2021年2月現在組織図

 

 

Q.管理者としての心構えや、新たに管理者となる方への教育制度は?

A.管理者が社内営業を行い、業務内容を拡大していきました。

外部及び他部門との関わり

また、資格取得制度があり、発達障害コミュニケーション初級指導者、メンタルヘルスマネジメント第II種、障害者生活指導員の資格取得者が従事しています。合理的配慮指針に準じた配慮についての方法をレクチャーしたり、従業員の労務管理も行います。

管理者の業務内容と資格

最初は、トップダウンで行政からの指導を避けるために始まったプロジェクトでしたが、経営者もCSR、SDGs、地方創生、地域貢献に対する評価についてビジネスの拡大に伴い、必要性が増してきたと思います。この事業を継続することにより新たなビジネスチャンスもみつかり、自治体や福祉業界との横展開、「The Valuable500」の加盟など、企業としての社会的責務も果たしていると感じています。コミュニケーションが生き甲斐で、障がい当事者とともに楽しんで仕事をしています。


インタビューを終えて、管理者である梶さんとともに従業員も仕事を楽しむことができるという姿に感銘を受けました。
同時にこの事業をしてよかった、という言葉が梶さんの心から出た言葉であることに喜びを感じました。障がいを持っていても、ともに社会の一員として働く企業があるという事実は私たちに希望をもたらしてくれるものと信じています。

 

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